ストーリークロニクル5

 プロローグ 英雄たちの決意
年代記における重要人物の1人である、カイン ヴァン ホルターの願い。それは彼が愛した者の幸せだった。たった一人の幸せのために、エルモアデン全域で孤独な戦いを繰り広げた彼を、歴史は記憶しつづけるだろう。
   英雄たちの決意(1)
オーレン城からそう遠くない場所、黄色の花々が転々と咲く草原で、十数名の若者たちがせわしなく動いていた。若者たちは全員、槍や剣を手に重装備で身を固めていた。野営を終えて出発の準備をしているようだった。
   英雄たちの決意(2)
トラブルを心配した何人かは、慌てて食事を済ませると宿を後にした。後から入って若者たちは、客たちが次々と逃げていくのを気にする風もなく、落ち着いた態度で宿の主人を呼んだ。
   英雄たちの決意(3)
カインは、自分がルウン出身なのがあからさまだと言ったオフィリアの言葉を思い出し、苦笑した。必死に否定するカインに、オフィリアはただ納得したふりをしてくれただけだろう。16年ぶりに戻って来た故郷だった。
   英雄たちの決意(4)
村の外れには一軒の空き家があった。オーレンだかアデンだかの領主の娘が、近衛兵と駆け落ちして隠れるように暮らしていたのだが、近衛兵が浮気をしたため、娘が彼を殺して自分も首を吊って死んだのだと言う…
   英雄たちの決意(5)
「じゃ、誰が先に入るんだ? カイン、お前からやってみるか?」 「私が行くわ」
答えたのはカインではなかった。その声は甲高く、はっきりとしていた。子供たちは声のする方へと振り返った。
   英雄たちの決意(6)
半円の形状をした村が見えて来た。通りには人っ子一人見当たらず、いくら雨が降っているとは言うものの、異常に思えるほど活気がなかった。
   英雄たちの決意(7)
カインはすぐに返事ができなかった。知り合いとは顔を合わせたくはないと思ってはいたものの、今何も応えられないのは相手が誰なのかがわからなかったからだ。
   英雄たちの決意(8)
亡者の森という名前が意味もなくつけられたわけではないことを証明でもするかのように、森は見るからに薄気味かった。痩せ細った木々は、枯れて奇妙に曲がっており、地面には蟻の子一匹通ってはいなかった。
   英雄たちの決意(9)
生きてさえいてくれるなら、もう一度彼女に会って抱きしめて、話をすることができるのなら、どんな姿であろうと構わなかった。カインは扉を開けた。そこには彼があれほど待ち焦がれていたジーゼルが佇んでいた。
   英雄たちの決意(10)
「エルモアデン史上最高の遺品である聖杯であれば... ヴァンパイアも人間に戻すことができるかもしれんな」
これ以上魔術師から聞きだせることはない。四人は、亡者の森を後にした。
  英雄たちの決意(11)
たわわに実った穀物は黄色く色づき、夕食時にはどこの家からも白い煙が立ち上っていた。
「領主様!」連絡兵が駆け込みながらエリックを呼んだ。
   英雄たちの決意(12)
その日の夜はカインがデュエリストの称号を獲得したことを祝うパーティーが開かれた。彼らはアデンの村の宿をまるで貸しきったかのように、食べて飲んでの大騒ぎだった。
  英雄たちの決意(13)
ゴダード村の西側の森の一角に冒険家たちの集団が集まっていた。彼らは木を切り草を刈って広場を作ると、チームを編成して力を競い始めた。
  英雄たちの決意(14)
帝国の墓の前では3つの血盟がそれぞれ陣を張っていた。エリックは自分を含むパーティー、エミリー、ビショップであるマーティーの5名の他、アーチャー18名を選び出した。
   英雄たちの決意(15)
45名の遠征隊は、ジグハルトの黄金羊の部隊が先頭となり、エリックのワイバーン部隊が右側、カインのウルフ部隊が左側に立って、三角形を作りながら帝国の墓へと向かった。
   英雄たちの決意(16)
空はどこまでも青く澄み渡り、鳥たちは楽しげにさえずりながら飛び回っていた。しかしそこに立っている者の中で、笑顔を浮かべている者など一人もいなかった。
 エピローグ 英雄たちの決意
カインは各冒険家組合に人を送りジグハルトについての情報を探らせたが、彼の足取りを掴むことはできなかった。
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